弊サイト「電脳世界」の著書『【一人暮らし首都圏用】賃貸物件探しガイド【試し読み】』の試し読み記事として、全86ページのうちページを無料で公開しています。
※本記事は書籍の内容をWebサイトでの公開用にフォーマットし直しているため枠や色合い、文章の改行部分など書籍とは少々異なる部分がございます。
第1章 物件探しの大まかな流れ
行き当たりばったりでは物件を調べるのも大変ですし、非効率です。 まずは物件探しにおける前提知識と、大まかな流れをざっくり把握しておきましょう。
1.1 不動産屋はあなたの味方というワケじゃない
まず大前提ですが、不動産屋は全面的にあなたの味方というワケではありません。不動産屋(仲介業者)は立場的に、物件を貸したい大家さん(と物件管理会社)と、物件を借りたい我々の間に入ってくれる調整役です。
営業なのでノルマがあったり、契約を取ればインセンティブが発生することが多いため、どちらかと言えば大家さんや物件管理会社の味方だと思っておいた方が無難です。
- なるべく時間をかけずに契約を取りたい
- なるべく高額な(厳密には仲介会社へのバックが大きい)物件の契約を取りたい
- なるべく契約が決まりづらい物件の契約を取りたい
というのが仲介会社、というより仲介会社で働いている営業の人の本音です。
もちろんこちらの希望に全然合わない物件を勧めても契約には至りづらいため、こちらの希望をもとに探してはくれますが、こちらが2つの物件で同じくらい迷っていたら、他の人だと決まりづらそうな方を勧めてきたり、こちらが見逃したデメリットはあえて口にしなかったり、くらいはあると思っておいた方がいいでしょう。
そのため不動産屋に相談する前に、こちらの条件や指針をハッキリさせておくのが重要です。
1.2 物件探しのプロセス
基本的に
- 希望条件チェックリストを作る
- ネットで条件に合う物件を絞り込む
- 絞り込んだ物件から特に気になった物件を候補としてメモする
- Googleマップで周辺環境のチェック
- 口コミサイトもチェック(ただし参考程度)
- 実際に内見に行く物件をいくつか(3つ程度)ピックアップ
- 管理会社が直接仲介をしてくれていないかチェック
- 不動産屋に連絡、内見をさせてもらい、ネット上ではチェックしきれなかった部分をチェック
という流れです。
いきなり不動産屋に相談してもこちらの希望条件がふわっとしていると最適な物件を紹介してもらうのは難しいですし、何度も内見に行って「なんか違う…」となっていては非効率です。
また、不動産屋も商売ですので、こちらの出した条件を元になるべく向こうが売りたい物件を勧めてくるのが自然です。中には親切な人もいるかもしれませんが、相手に頼りっきりになるのは取り引きにおいて極めて不利です。
こちらの条件や指針がはっきりしていれば、流されて納得のいかない物件を選んでしまうリスクは小さくできます。
▲不動産賃貸仲介大手エイブルさんの条件検索。あらかじめ条件を決めてからこのように条件検索で物件を探していきますが、指定できる条件だけでは不十分なので、先に自分の条件リストを作るのがおすすめです。
ちなみにポータルサイトごとの特徴ですが
- SUUMO:一番物件数が多い。既に決まってしまっている物件がまだ掲載されていることがたびたびある。数が多いのでエリアごとの相場観が養える。
- ホームズ:物件の住所が掲載されているので、SUUMOで気になる物件があったらホームズで住所を出してGoogleマップで周辺環境の調査。
- エイブル:たぶん慣れのせいですが、条件選択やUIが個人的にもっとも使いやすい。
ほかにもいろいろありますが、私は上記の3サイトを使いました。
1.3 こっちは客でも実は立場は弱い
物件を探すうえでもう1つ念頭に置いておかなければならないのは、借り手は客でありながら、実は立場はけっこう弱い、ということです。
あなたが「なんでもいいから人が住める物件を」というなら話は違ってきますが、色々と希望条件があり、なんならその条件に当てはまる中でも割安な物件を借りたいはずです。
しかしあなたにとって魅力的な物件というのは、他の人にとっても魅力的な物件である可能性が高いです。そういう物件は仲介会社からすれば「放っておいてもすぐに決まる物件」であり、目の前のあなたに一生懸命勧めるメリットが薄いです。特に首都圏や首都圏に通勤可能な近郊エリアの物件であれば需要が高いためなおさらです。
魅力的な物件を借りたいのであれば、カネを払う側でありながら、こちらの立場は案外弱いです。無礼な態度を取ったり、内見のアポイントに遅刻したりするのはもちろんよくないですし、連絡もなるべくこまめに返すなど、誠意ある対応を心がけましょう。私は「良い物件を私に貸してくださいお願いします」くらいの温度感で臨んでいます。
第2章 エリアを絞り込もう
まずは希望のエリアを決めます。「関東圏じゃい」とか雑に決まっていても物件どころかエリアさえ多すぎて絞り込めません。もっと絞り込んでいきましょう。
2.1 在宅ワーカーの利点
リモートワーカー・在宅ワーカーと、毎日通勤する人で、一番希望条件に差が出るのが交通面です。毎日通勤・通学する人にとって交通アクセスは死活問題ですが、リモートや在宅ワーカーの場合、重要性が劇的に下がります。(週1~2出社とかの場合はだいぶ悩ましいですが。)
通勤・通学がある人の場合、
- 目的駅のすぐ近くに住む
- そこまでのお金が出せない場合は、いっそガッツリ離れてしまい、始発駅から乗り換えなしで座って通勤する(座れれば作業をしたりゆっくり動画を見たり、時間を有効活用できる)
のどちらかを選ぶのが最適解だと私は結論付けています。
しかしリモートや在宅ワーカーの場合、多少交通アクセスの悪いエリアを選ぶことで家賃が割安な物件を探す方が満足度が高いと思います。(限度はありますが)
そのぶん家にいる時間が長くなるため、建物そのものや設備、つまりRC造や、エレベーター付き、築年数が浅い(建物や部屋の設備が新しいので快適)、など他の条件にこだわった方が良いでしょう。
となると通勤・通学する人とは真逆の
- 栄えている駅まで乗り換えが必要
- 各駅停車駅
- 始発がない
そういう需要がやや控えめな駅の近くで探した方が良い物件に出会える可能性が高いです。
ただし需要があまりにも低いエリアだと、そもそも賃貸物件の数そのものが少なかったりします。その辺りはポータルサイトで路線検索すれば、最寄り駅ごとの物件数を見ることができます。
2.2 目的駅までの時間的距離
私は在宅自営なので特定の目的駅はないのですが、リモートワーカーであれば自分が勤めている会社、フリーランスでも主要取引先との打ち合わせがよくある場所が概ね決まっている方も多いでしょう。
毎日出社するわけではないとはいえ、いざ出社するときに2時間も3時間もかかるのはちょっとつらいです。とはいえ首都圏とその周辺の路線に詳しくないと、土地勘がなさすぎて調べるのも一苦労です。まったく土地勘がない方でも不動産ポータルサイトの路線検索を使えば効率的に候補駅を選定することができます。
▲不動産賃貸仲介大手ホームズさんの路線検索。快速や通勤快速が止まるかどうか確認できるだけでなく、乗り入れ路線の本数や目的駅までの所要時間、各駅周辺の家賃相場まで1ページにまとめて表示してくれていて便利です。
▲エイブルさんの路線検索。急行等が停車するかどうかだけでなく、始発駅かどうかも表示してくれていて便利です。
▲不動産情報ポータルサイトSUUMOの「通勤・通学時間から探す」。これで土地勘がなく路線がわからなくても、最寄り駅までの時間的距離と必要な乗り換え回数がわかります。
第3章 物件本体
この章では物件本体(建物そのものや立地、設備)について見るべきポイントをまとめました。物件探しで一番大変なところでもあり、楽しいところでもありますが、物件があまりにも見つからないと疲れて嫌になってくるので、効率的に進めたいパートでもあります。
3.1 希望の家賃を決める
物件を探すにあたり、とりあえず希望の家賃を決めておきましょう。5万しか出せないのに10万の物件を見ても仕方がないですし、15万の部屋に住もうとしている人が7万の部屋を見ても、まず選ばないでしょう。
ただ、少しだけ幅を持たせておくことをおすすめします。例えば希望する家賃が8万円だとしたら、7~8.5万円で検索をかけます。下限はもちろんですが、上限も突破させておきましょう。8万円では色々妥協しないといけないけれど、8.5万円出せばほぼほぼ希望通りの物件が出てくる、というのは全然ありえる話ですし、それが5千円の差であれば家賃の方を妥協する人は多いのではないでしょうか。
3.2 用途地域
用途地域(ようとちいき)とは、簡単に言えば「その土地をどういう用途で使っていいか(何を建ててもいいのか)」で、都市計画法で定められています。
賃貸物件を探すうえで一番いいのは住居地域で(これももっと細かく分類できるのですが)、住居のほかに中小規模のスーパーやホテル、運動施設、その他店舗・事務所などを建てることができます。
準住居地域になってくるとカラオケボックスや映画館、ごく小規模な工場などが建てられるようになり、商業地域になってくるとパチンコ屋やラブホテルなども建てられるようになります。
準工業や工業地域だと工場が建てられるため、騒音や異臭に悩まされる可能性が出てきます。いずれも既に建っているものは内見時に周辺を散策すれば確認できますが、用途地域にそぐうものは後から建てられる可能性もあるため確認しておいた方が無難です。
3.3 建物の構造
建物の構造は大きく分けて3種類あります。
- 木造
- 鉄骨造
- コンクリート造(RC造、SRC造)
下に行くほど耐震性が高く、耐用年数が長いです。また、コンクリート造なら耐火性や気密性・防音性も優れていますが、値段も高くなる傾向にあります。