賃貸でもできる線路沿い物件の騒音対策(防音)

昨今は賃貸でもできる防音対策(=手軽に取り外せるので退去時の原状回復が現実的なもの)も増えています。

あらかじめ知っておけば対策込みで線路沿い物件を選ぶ余地も出てきますし、もうちょっとだけ音が小さければ住めそう…という物件が候補になります。また、住んだ後にやっぱりキツかった…という場合の保険にもなります。

騒音対策は線路沿い物件だけの問題に限らず他の騒音、例えば幹線道路沿いや飛行機の飛行ルート、繁華街の夜の騒音、隣の住人がうるさい、といった問題にも活用できますので、知っておくと便利です。

目次

音に関する前提知識

はじめに音に関する基礎知識をざっと知っておきましょう。対策するにはまず対象のことを良く知る必要があります。

騒音値の基準と目安

騒音値(騒音レベル)や音圧(音の大きさ)はデシベル(db)という単位で表されます。

しかし我々一般人にしてみれば何デシベルがどれくらいの音量で、何デシベルくらいまで下げれば問題ないのかピンときません。

日本騒音調査ソーチョーさんによると騒音値の目安は次のとおりです。

目安①(うるささ) 目安②(身体/生活への影響) 騒音値(db) 騒音発生源と距離、大きさの目安
きわめてうるさい 聴覚機能に異常をきたす 120db ・ジェットエンジン(飛行機)の近く
110db ・自動車のクラクション(2m)
100db ・電車が通るときのガード下
・液圧プレス(1m)
うるさくて我慢できない 90db ・犬の鳴き声(5m)
・騒々しい工場の中
・カラオケ(店内中央)
・ブルドーザー(5m)
80db ・地下鉄の車内
・電車の車内・ピアノ(1m)
・布団たたき(1.5m)
・麻雀牌をかき混ぜる音(1m)
うるさい かなりうるさい。かなり大きな声を出さないと会話ができない 70db ・騒々しい事務所の中
・騒々しい街頭
・セミの鳴き声(2m)
・やかんの沸騰音(1m)
大きく聞こえ、うるさい。声を大きくすれば会話ができる 60db ・洗濯機(1m)
・掃除機(1m)
・テレビ(1m)
・トイレの洗浄音
・車のアイドリング(2m)
・乗用車の車内
普通 大きく聞こえる、通常の会話は可能 50db ・静かな事務所
・家庭用クーラー(室外機)
・換気扇(1m)
聞こえるが、会話には支障なし 40db ・市内の深夜
・図書館
・静かな住宅地の昼
静か 非常に小さく聞こえる 30db ・郊外の深夜
・ささやき声
ほとんど聞こえない 20db ・ささやき
・木の葉のふれあう音

信憑性の高そうなコーポーレートサイト、企業のYoutubeチャンネルをいくつか見比べても、だいたいこの数値が使われているため、これを基準として考えて良さそうです。

つまり線路沿いの物件であれば、おそらくは60~80デシベル程度。それに対し多くの人が快適に過ごせる音量は40~50デシベル程度です。

また、同ページには世界保健機関(WHO)のガイドラインによる睡眠障害の閾値も記されていて、その値は40db(約11%の対象者が睡眠に影響する)とされています。

これを考慮すると生活空間は50db以下、寝室は40db以下に抑えれば多くの人が騒音と感じないレベルとなりそうです。

音の種類

音は振動による波ですが、大きく次の2種類に分けられます。

  • 空気伝搬音:その名のとおり空気を伝わってくる音。人の声やテレビの音、掃除機の音など。
  • 固体伝搬音(振動音):建物の床や壁などを伝わってくる音。上の階からの足音やドアの開け閉めの音など。

このうち空気伝搬音は防音グッズにより防ぎやすく、固体伝搬音は防ぎにくいです。

また、音には周波数帯(音の高低)もあり、高い音の方が防音しやすく、重低音ほど防ぎにくいです。

電車の音の種類

線路沿いで問題となる電車(関連)の音には大きく分けて次の3種類があります。

  • 走行時に風を切る音(ゴォォォー)
  • レールの継ぎ目を通過する時に車輪がレールを叩きつける音(カタンッコトンッ)
  • 踏切遮断機の警報音(カンカンカン…)

このうち電車の走行音と踏切遮断機の警報音などは空気伝搬音、車両がレールの継ぎ目を通過する時に車輪がレールを叩きつける音は固体伝搬音となり地面から建物を伝わってきます。

問題に感じているのが電車の走行音や踏切遮断機の警報音であれば対策による効果は大きく見込めますが、カタンコトン音の場合は対策が難しく、ある程度大がかりな対策が必要になるうえ十分に音を減衰できるかは微妙です。

ということで音について基礎知識を入れたうえで、賃貸物件でもできる対策を見ていきましょう。

耳栓

一番手軽で安価かつそれなりに効果が見込めるのが耳栓です。

引っ越してみて「音がキツイ」と感じたら真っ先に導入するのがコレでしょう。

実際私も線路沿いの物件に複数住んだことがありますが、入居してみて「思ったよりキツイ」と感じた時、とりあえず初日を耳栓で凌いでいました。

問題になるのが睡眠だけであれば耳栓で対策を済ませてしまうのも1つの手です。会社に毎日通勤していて、休日も外に遊びに行くことが多い人ならこれだけで十分なケースも多いでしょう。

モルデックスの耳栓なら安価で、定期的に取り換えれば衛生面も安心、音の減衰効果も33dbのものがAmazonなどで簡単に手に入ります。

RC造に住もう

引っ越した物件が木造や鉄骨造で電車の音が気になる場合、潔くもう1回引っ越すことをおすすめします。

というのも木造や鉄骨造での騒音対策はかなり難しく、それなりに音を減衰させようとすると壁一面に対策が必要になるため、費用が100万円くらいかかってしまう可能性があります。

また、木造や鉄骨造の場合、音だけでなく振動に悩まされることもあるでしょう。音は減衰できる可能性があっても振動まで対策するのはほぼ不可能です。

組み立て式の簡易防音室

睡眠時だけでなく作業中や余暇時間も気になる場合は、組み立て式の簡易防音室が売っています。

価格は10万円程度から20万円を超えるものまでピンキリです。

これはYoutubeや宅内収録をする声優さんなど、どちらかと言えば内側から出す音を外に出さないことが主目的のものですが、外からの防音性能もある程度期待できると思います。

ただ、私は使ったことがないためどの程度の効果が見込めるのか、あまり詳しくありません。

1つ言えるのは防音には質量が大きく関係してくるため、基本的には大きさの割に重たいものほど防音性能が高い傾向にあるはずです。

窓用ワンタッチ防音ボード

防音専門ピアリビングさんで売っているオーダーメイドの窓用防音グッズです。

建物自体がRC造の場合、電車の音が伝わってきているのは主に窓と考えていいでしょう。部屋の中で音を聞いてみれば、窓からの音がとりわけうるさいかどうかは普通にわかります。

RC造の物件は壁がコンクリートのため壁から入ってくる音はかなり減衰されているはずですが、窓はそうはいきません。

理想は二重窓(内窓)や窓の外にシャッターを取り付けることですが、賃貸物件でその手の工事をするには管理会社に連絡して、大家さんに許可をもらう必要があり、退去時の原状回復もどうするかなど、現実的な方法ではありません。

そこで便利なのがピアリビングさんの窓用ワンタッチ防音ボードです。

これなら器具などを一切使わず手で容易に取り外しができますし、防音専門の業者がオーダーメイドで隙間が生まれないよう作ってくれるだけあって、効果もそれなりに期待できます。

ピアリビングさんはYouTubeで実際の線路沿い物件での防音効果の検証実験も動画としてあげてくれており、動画では16.7dbの減衰に成功しています。

価格はそれなりで、小さいものであれば2~3万円程度ですが、ベランダに出られる大きな窓に設置する場合は15万円~20万円くらいかかります。

けっこうな出費ですが、線路沿いの物件は他が同条件のマンションと比べて家賃が月1~2万円、下手をするともっと安い場合もあり、このグッズでなんとかなるなら1年もあれば元が取れる計算です。

やけに詳しいなぁと思われるかもしれませんが、実際に発注してみたので届き次第効果のほどをレポートします。

防音カーテン

わりと手軽な対策としてあげられるのが防音カーテン。とはいえ効果のほどは気持ち程度。おそらく数値にすれば5db程度です。

というのも防音カーテン程度では厚みも大したことがなく、どうしても隙間が空いてしまう。そして質量も普通のカーテンに比べれば重いものの、たかが知れています。

引っ越し初日で「あれ寝れねーぞ」ってなり、翌日大急ぎでニトリに買いに行って付けてみましたが、まぁ気持ち程度は小さくなったものの、根本的な解決に至るレベルではありませんでした。

とはいえカーテンはどのみち必要なので、騒音に悩んでいるのであれば防音カーテンにしておくに越したことはないでしょう。

これ単体で騒音を解決するというより、他の防音グッズと組み合わせて効果を期待するものだと思います。

パテ

これも手軽な対策ですが、エアコンダクトの周りを覆っている粘土のような物体です。

隙間から入ってくる音対策で、エアコンダクトの穴周りにできてしまっている隙間を埋めたり、どうしても気になる場合は給気口を塞いでしまったりします。

給気口が開けられるタイプであれば「防音スリーブ」というアイテムを中に詰め込むといいのですが、開けられないタイプの場合これくらいしか対策法がありません。

ただしRC造の物件は気密性が高いために給気口の設置が義務付けられており、そこを塞いでしまうのは本来推奨されません。塞いでしまう場合は毎日定時に換気をする時間を設けるなど、意識的に部屋内の喚起を心がけましょう。

これもそこまで効果は見込めないため、他の対策で概ね十分な防音ができた場合の最後の仕上げくらいに考えておきましょう。

隙間テープ

窓やドアの微妙な隙間を埋めるためのテープです。

窓のサッシの隙間や玄関ドアの隙間に貼ることで、気持ち程度の防音が期待できます。

隙間を埋めるのは防音ではけっこう重要なのですが、電車という別格の音量に対しては根本的な解決にはなりません。こちらも他の対策で概ね十分な防音ができた場合の最後の仕上げと考えておきましょう。

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